桜も随分散ってしまった4月3日。
日本にある1741、全ての市町村を周り切った
写真家のかつおさんこと仁科勝介さんにウェディングフォトを撮影していただきました。
撮影場所は結婚前に2人で生活をしていた江古田の街。
良く顔を出していたお店、2人で歩いた街並み、一度歩いてみたかった道。
かつおさんと3人で歩き回りながら、お話を訊いたり、したりしながら半日間撮影をしていただきました。
また撮影終了後には、写真の掲載と共にエッセイをお願いしたら快く執筆してくださいました。
かつおさんと過ごした半日はしぇるとさな、僕たち夫婦にとって、とても素敵な時間となりました。
かつおさんの優しさに溢れている写真と文章と共に、幸せをお裾分けできたら嬉しいです。
仁科勝介(にしなかつすけ)さんプロフィール
かつお|仁科勝介
Katsusuke Nishina1996年、岡山県倉敷市生まれ。
広島大学経済学部経済学科卒。
2018年3月に市町村一周の旅を始め、
2020年1月に全1741の市町村巡りを達成。
2020年8月には旅の記録をまとめた本、
『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)を出版。
写真館勤務を経て2020年9月からは独立をし
ほぼ日刊イトイ新聞掲載のコンテンツをはじめ、
様々なメディアへの掲載や出演をしている。
やわらかな風が吹き、晴れと曇りが交互に入れかわる春の空。
気まぐれな天気も、今日はなぜだか、気にならない。
だって今日は、いい日だもの。
かつてお二人が一緒に過ごされた、中野区江古田にいる。
この地を舞台に、ウェディングフォトを撮影させていただいた。
お二人の思い出をなぞるように、江古田の街を、一緒に歩きながら。
新江古田駅を降りた先は、落ち着いた住宅街が広がっていた。
昭和らしい細く入り組んだ通りもあれば、きれいに整った最近のマンションも建っている。
どちらにも確かな「暮らし」があり、行き交う人々の姿は、のびのびとしていた。
それは街全体の雰囲気そのものであり、お二人にとっても、江古田の雰囲気がなつかしいようであった。
当時お二人が住んでいたお家にも訪れたが、
「いまは、あたらしい人が住んでいるのかなぁ」
そう会話する二人の声は、江古田の街のように生き生きとしていた。
新青梅街道まで歩くと、桜並木はややピークを過ぎて、花びらが散りはじめていた。
まだ4月初旬、例年なら満開かもしれない桜並木から、ひらひら風に揺れて、花びらが踊っている。
道路の隅に集まった桜の花びらと、木々の枝に残った桜の花びら。
目線は下と上の、どちらの選択肢もあったけれど、お二人は心から、楽しそうに上を見上げていた。
「きれいな桜だね〜!」その会話が、まもなく葉桜になりそうな木々にも、届いている気がした。
わたしも幸せな気持ちになった。
それからは近くの哲学堂公園や、商店街の広がる沼袋駅、よく訪れていたという銭湯の一の湯さん、
お二人の思い出をなぞるように、この街をたくさん歩いた。写真をたくさん撮った。
江古田の街を歩いていると、かつてのお二人の日々が聴こえてくるようだったし、
街そのものが、お二人を祝福しているようであった。
お昼ごはんには、大好きなお店だという地元のレストランへお伺いした。
「久しぶりだね〜!」切り盛りするご夫婦の表情が、やさしく緩む。
「お店に来てくれたときは、いつも二人だったわよね」と奥様がひとこと。
そうか、このレストランとの思い出は、一人ではなく、二人のものなんだ。
いつも注文していたというカツカレーは、ホッとする味で、二人の頬もやさしく緩んでいた。
あっという間な時間の中で、いろいろなお話もさせてもらった。仕事のことや、人生のこと。
共通していたのは、それらすべてにおいて、二人で手を取り合い、支え合って生きていく思いが、
二人の思いとして通じ合っていたことだ。
「いつかまた、二人で江古田を歩こうね」
かつての賑やかな会話が、いまも聴こえてくるよう。
二人の愛は、強く結ばれている。
だから、手をつないで歩く二人が、わたしは大好きだ。